用語集

 

< ア行 >

青き衣の者
土鬼土着の宗教に伝えられる使徒。人類が亡びに瀕した時に現れる預言者。
過去に何人の「青き衣の者」が現れたか定かではないが、少なくとも300年前の大海嘯の時に一人現れている。
アスベル
旧ペジテ市の王子。
序盤ではヒーロー並みに描かれていたが、終盤ではめっきり影が薄くなってしまった。
ラステルとは双子の兄妹。
イド
フロイトの考えた欲望の源泉。エスともいう。
自我・超自我と並ぶ精神の三大要素の一つ。
本能(遺伝子の要求)そのものとも言え、低次の段階では生物学的欲求を生み出し、高い段階に移行していくにしたがって超自我と結びつき自己実現欲求を生み出すようになる。
ヴ王
トルメキア王。
シュワの墓所に眠る旧文明の技術を求めトルメキア戦役を起こす。
クシャナに言わせれば、無慈悲で邪悪な小心者。 他人を信じず、見下している。
物語上、悪役には違いないのだが、第七巻では何故かそれほどの悪人としては描かれていない。
最後はナウシカをかばい、墓所の光を浴びて死亡。
ウシアブ
けっこう登場回数の多い中型の蟲。ちなみに原作ではこの名前は出てこない。
内なる目
心理学者ハンフリーの使った言葉。「意識」は自らの内面を見る「目」と言う意味。
エフタル
辺境諸国の元となった王国。
旧文明のテクノロジーを保持し栄えていたが、継承問題で内戦に突入。
それに伴う武器商人による王蟲乱獲が大海嘯を引き起こし滅亡。
ちなみにナウシカの言語はエフタル語である。
エロス
色々な意味があるが、この場合はフロイト流に「生の本能」。タナトスと対極の概念と考えてもらいたい。
生に対し肯定的で生産的な性格を持つ。タナトスと合わせてイドを形成すると考える。
オーマ
ナウシカに名付けられた巨神兵。ペジテ市の地下深くで発見された。
ナウシカを母と慕い、ナウシカにより生きる目的を与えられる。
しかし、成育過程に問題があったのか、誕生直後から身体の崩壊が始まる。
ある意味、もっとも可哀想なキャラである。
「オーマ」は古エフタル語で「無垢」の意。
皇子たち
トルメキア王家第一〜第三皇子。ヴ王の息子たち。
父親そっくりの肥満体が三人いるが、名前すら付けてもらってない。
第三皇子は蟲の移動に遭遇し死亡。第一・第二皇子は双子だと思われる。だって似てるんだもん。
第七巻で庭園に居着いてしまい戦線離脱。クシャナの憎悪の対象だった。
王者
王道、すなわち人の行くべき道をもって世を治める者。
力をもって世を治める「覇者」の反対語である。ただの王位継承者を「王者」とは呼ばない。
王蟲
腐海のヒエラルキーの頂点に君臨する巨大ダンゴムシ。
14個の眼と人間と同等以上の知性を持ち、基本的には温厚だが、人間が腐海を荒らしたり蟲を殺したりするとキレて襲いかかってくるという、分裂病ちっくな性質がある。
これは物語終盤で明らかになるように、蟲たちが腐海の番人として作られた為である。王蟲自身はその性質を悲しんでいるようだ。
普段は青い眼をしているが、怒ると赤くなると言うのは周知の通り。
他の個体と精神を共有し、仲間への深い愛情を持っている。
また、ナウシカが理想とする存在でもある。
オオナメクジ
蟲使いが使役する蟲。 とは言えただの家畜ではなく、両者の間にある種の信頼関係があると思われる。
オジル
土鬼人マニ族。ナウシカを自分のモノにしようとして返り討ちにあった土鬼のセクハラ戦士。それにより死亡。嫌われ者だったらしい。

 

< カ行 >

カイ
トリウマ(♂)。ナウシカの出陣に際してユパから贈られた。
サパタ城攻防戦にて奇跡の活躍を見せナウシカを救った後、死亡。
ナウシカにとっては友と呼ぶべき存在であった。クイとつがい。
ガイア説
地球(正確には地表から上下100マイルの範囲)を一個の生命体のように捉え、それが環境や生態系のバランスなどを制御しているという仮説。地球が意思を持っていると考えてもいい。
外来種
人間によって本来生息しない地域に持ち込まれ、繁殖・野生化した種。
日本ではブラックバス、アライグマ、フェレット、アメリカザリガニ、在日米軍、デヴィ夫人などが挙げられる。
特に旧来の生態系に周囲に悪影響を及ぼすものを指している。
快楽主義
いかに楽しむか、いかに快楽を得るかを人生の主要命題とした論理。
「今が楽しけりゃいーじゃん」的生き方。享楽主義
風の神様
風の谷で信仰の対象となっている神。具体的な描写は出てこない。ナウシカらの倫理の根拠として登場。古エフタル王国滅亡後に広まった信仰と思われる。
風の谷
人口500人の小王国。海から吹く風がかろうじて腐海に飲み込まれるのを防いでいる。
主な産業は農業。他国と交易している様子はあまり見られない。
物語開始時の族長はジルだったが、第二巻で病死。以後、王位はナウシカに継承されたが、ナウシカが帰国しなかったので族長不在のまま終局にいたる。
カタルシス
精神の自浄作用。不満を発散する様々な行動。(例 :泣く、怒る、叫ぶ、愚痴る、ちゃぶ台返し、など)
葛藤
欲求同士の衝突。または欲求と理性(超自我)の対立。これが少ないほど行動に迷いがない。
ガンシップ
辺境諸国が保有する戦闘機。古エフタル王国の遺産である。
それぞれ形状がビミョーに異なり、それでどこの国の所属か判別できるらしい。
その機動力はコルベットを上回るが、主砲は単発という正に一撃必殺の兵器。
辺境諸国はこの戦力があるからこそ、かろうじて自治を保っていられる。
キツネリス
その名の通り、キツネとリスの中間のような外見をした小動物。雑食。
「天空の城ラピュタ」にも登場した。
ジブリのマスコット的ポジションはトトロに持っていかれた。
旧人類
とくに「火の七日間」後の汚染適応人種を指す。物語に出てくる全人類。
旧世界
この時代の人間界をこう呼んでいる。特に「火の七日間」後の人間界という意味が強い。
旧文明
高度に発達した技術体系を持った千年前の文明。特に「火の七日間」前後の時代を指して用いられる場合が多い。
教団
シュワの墓所の内部に住み、墓所の主を神と崇める研究者集団。
旧文明のテクノロジーによっておおむね不死であり、主の表面に現れる文字をひたすら解読し続けている。
強迫観念
「○○をしなければならない」という根拠の不明な思い。
抑圧された欲求や不安が別の形になって現れてきた場合が多い。延々手を洗い続けるなどはその典型。
巨神兵
旧文明末期の混乱を抑えるため造られた人造の神。調停者であり裁定者。
人間並みの知能と圧倒的な破壊力をあわせ持つ。量産され、「火の七日間」で世界を焼き尽くした。
虚無

ナウシカの精神世界で出てくる、死者の姿をした怪物。
言動は一貫して批判的で否定的。ナウシカ自身のタナトスを擬人化したものだと思われる。
ナウシカの心の闇とも言え、彼女に現実を突きつける役目も果している。
第六巻以降で登場しないのは、
第五巻の終盤でナウシカがこれを受け入れ、自己矛盾が解消したからだろう。

クイ
トリウマ(♀)。カイと共にユパの愛馬であった。カイの死後、卵を産む。
クシャナ
トルメキア王家第四皇女。本作品の影のヒロイン。
皇子たちとは異母兄妹。ただ一人先王の血を引いている為、幼少時から生命を狙われてきた。
不幸な境遇で育った為、物語開始当初はやさぐれていたが様々な出来事を通して真人間になる。
人間らしく苦悩するクシャナは、むしろナウシカに比べ親近感を感じやすい。
クシャナの母
先代のトルメキア王の娘。
クシャナをかばって毒を飲み正気を失う。クシャナの復讐の原点。
クロトワ
トルメキア人。平民出の叩き上げ軍人。
参謀としてクシャナの下に派遣されてきた。しかし参謀らしい仕事はしていない。実質コルベットの操縦士である。
実は秘石回収の密命を受けたヴ王のスパイだった。だがクシャナに見破られ寝返る。
序盤では作者の皮肉家なペルソナを肩代わりしていたが、後半はただの賑やかしに。
ケチャ
マニ族の少女。本作のミス・貧乏くじ
自分で望んだわけでもないのに王蟲の培養槽破壊に付き合わされ、逃避行に付き合わされ、その後腐海に落ちて蟲の卵を飲まされる等々、本人の意志とは関係なく運命に翻弄される、ある意味一番かわいそうな娘。
その他にも全編通して散々な目にあっているが、最後はアスベルとくっついてハッピーエンドのようだ。
権威主義
肩書きや地位など社会的な価値を重視する考え方。
システマティックな社会の基本的な価値観でもある。
皇兄ナムリス
→ナムリス
皇弟ミラルパ
→ミラルパ
合理化

ジレンマや認知的不協和を強引に理屈付けして、精神の安定を図る手法。
好きな人に告ってフラれた時、「彼女(彼)とは価値観が合わない」とか、「きっと十年後にはデブる(ハゲる)に決まってる。
」などと考えて己の傷を舐める事。

コルベット
トルメキアの中型戦闘艦。高官は一人一機づつ持っているらしい。

 

< サ行 >

裁定者
裁きを行う者。巨神兵が司る役割の一つ。その裁きは生死の判定にまで及ぶ。
酸の湖
腐海の中にある強酸性の湖群。王蟲すら容易に死に至らしめる。
シェマ
自己や周囲の環境に関する様々な知識や観念・信念。認知的な枠組み。世界観も同じような意味で使っている。スキーム。
自我
フロイトの言う「エゴ」。イドや超自我の要求を現実に照らし合わせて行動を決定する役割を持つ。精神の三大要素の一つ。
自我発達段階
心理学者レーヴィンジャーは九つの段階を想定した。
より高い段階になるにつれ、自己・他者・世界についての理解が深まり視野が広がっていく。
この場合の「自我」は上記の意味とは違い、もっと総合的な精神を指している。
自己概念
自分についての客観的・経験的な知識。自己知識とも言う。
自己決定欲求
自分の事は自分で決めたいという欲求。自律心。強すぎると社会生活に支障が出ることも。
自己高揚動機
自分の価値を高めたいと思う感情。あるいは自分を価値あるものと思いたい心理。他者との関係の中で発生する感情のほとんどがこれに由来する。
自己像
セルフイメージ。自分というものを想像した時に浮かんでくるイメージ。自己概念よりも抽象的で感覚的な意味合いが強い。
自己同一性
アイデンティティー。自分を自分たらしめる主観的、もしくは社会的な一貫性。私が私である根拠。
自己保存本能
生物が自己の生命を維持しようとする本能。最終的な目的は遺伝子の保存。食欲・睡眠欲・性欲を始め、ほとんどの欲求はこれに起因する。
動物行動学者ドーキンスによれば、生物個体の存在目的は自己遺伝子の保存であり、欲求・行動はそれにしたがって発生するという。
その意味で、自己保存本能は個体の行動をコントロールするプログラムと言える。
言うなれば我々は遺伝子が過去から未来へ存続していくための乗り物に過ぎないのである。
(参考:R,ドーキンス 「利己的な遺伝子」)
自己矛盾
自分の思考や行動に一貫性が得られないこと。自己概念における認知的不協和とも言える。
とりあえずサラリーマンになったはいいが、「俺がしたかったのはこんな事じゃないのに・・・」と不満を感じている人はまさにこれ。
ジャイアニズム
剛田剛氏の提唱した理論。「お前の物はオレの物。オレの物はオレの物。」として知られる。
彼のニックネームにちなんで名づけられた。
シャドウ
もう一つの自我。無意識的自我。影の人格。
多くの精神病は表の人格(意識的自我)とこの裏の人格(無意識的自我)の均衡が崩れる事によって発症する。
自己矛盾が如実に現れる。
集団
グループ。
「内集団」は自己を含む集団。「外集団」は自己を含まない集団。
集団の成員は互いに影響し合い、同調作用で言動などが類似してくる傾向がある。
また人は内集団をひいきし、過大に評価する傾向もある。自分が常に多数派であるという意識はここから生まれる。
終末思想
世界はいつか終末を迎えるという考え方。
キリスト教の「審判の日」、ヒンドゥー教の「カリ・ユガ」など多くの宗教はこの思想を持っている。
シュワの墓所
土鬼の聖都シュワの中心にある建造物。旧文明によって造られた世界再建計画の要。
協力と引き換えに時の権力者にハイパーテクノロジーを提供するが、その協力がどれほど必要なのかは不明。
生体素材で出来てはいるが、生物と言うよりも機械に近い。
漿
漿液とも。王蟲の分泌する特殊な液体。非常に希少な物質。
酸素を生成し、肺に吸収すると腐海でもマスク無しで生きられるらしいが、明らかにマスクの方が使い勝手がいいと思うのは気のせいだろうか。
王蟲はナウシカを守るため、これで彼女を包んだ。
止揚
対立する複数の概念の統合的発展。矛盾をより高い次元の視点から統合する、というニュアンスで使っている。
上人
土鬼人。
土着の宗教を奉じる忘れられた神殿で、ほとんど即身仏になっていた僧侶。
人の愚行や大海嘯、シュワの墓所なども全て世界の再生に繋がる一連の現象であるとして破局の必然性を説く。
ナウシカとの対話後、本当に即身仏となる。
初代神聖皇帝
土鬼人。ナムリス、ミラルパ兄弟の父。
庭園にて番人に師事した後、ヒドラを率いて旧クルバルカ王朝を打ち倒し、土鬼諸侯国連合を興す。動機は「人を救いたい」であった。
延命手術を繰り返したが、最後は身体を崩壊させ死亡。
ジル
(物語開始時点での)風の谷の族長。ナウシカの父。
開始当初からすでに石化の病に侵されており目立った活躍は無し。王族なのにシンプルな名前。
城ジイ
労働の第一線から退いた後、城勤めにまわった中高年の男性。ナウシカの周りにいっぱいいる。
深淵
虚無の深淵。本来の意味での「無」。作中では全ての生命が生まれ、そして還っていく場所として描かれている。
新人類
浄化された世界で生きるべく造られた人類。性格は穏やかで賢いらしい。
卵の状態で墓所内に眠っていたがオーマに踏まれた上、墓所が崩壊した為、全滅。
刷込み
鳥などが産まれた後、初めて見た動くものを親と思い込む習性。
性悪説
人間は生来悪であり、生きていくにしたがって良識を身につけ、善なる存在へと変化していくとする考え方。(⇔性善説)
聖域

ここでは「シェマ、および自己概念に決定的な確信が得られた時」の人の精神状態を指す。
「聖域に入る」という使い方をするらしい。
具体的にはアドレナリンの大量分泌に起因する。
この状態の人間の特徴としては、意識の先鋭化・恐怖感や不安感の欠如・自己保存本能の超越などが挙げられる。

清浄の地
浄化された土地。
土着の宗教で青き衣の者が人々を導くとされる楽園。
腐海の尽きるところ。
性善説
人間は生来善であり、生きていくにしたがって不純な存在へと変化していくとする考え方。
どんな人間も皆、根は良い人であるという楽観論。そう思いたい願望が根本にある。
バラエティ番組に出てくるヤンキーのちょっとした純粋性を過度にクローズアップする司会者などは良い例であろう。
世界再建計画
墓所の主が中心となり推し進めている計画。
概要は腐海により大地を浄化した後、各地に点在する「庭園」に保存されている様々な種と新人類により理想の楽園を実現させようというもの。
石化の病
腐海のほとりで生きる者たちにとって避けられない病。長年の間にたまった体内の毒素によって発症する。症状としては末端からの麻痺に始まり最終的には死に至る。
絶望
タナトスの発現。「絶望は死に至る病である」 by キルケゴール
セネイ
トルメキア人。
トルメキア第三軍第一連隊長であり、クシャナの忠臣。 ヒゲの渋いおっちゃん。
サパタ城に立て篭もっていたがヒドラに襲われ死亡。
セライネ
森の人。セルムの妹。
出会った人間のマスクを手当たり次第に改良するのが趣味らしい。
それ以外の出番は特に無し。
セラミック刀
超硬質セラミック片から削りだした日常刀。武器と言うよりも鉈であり鎌である。ナウシカがいつも腰に差している。
セルム
森の人。
森の人の長である父により大海嘯の動向視察を命じられ旅をしている。
ミラルパに匹敵する超常の力を持つ。
終盤では常時幽体離脱し、ナウシカの同行者となっている。ある意味、ストーカーか。
僧会
ミラルパ直属の行政機関。土鬼諸侯国連合を統治している。
僧正
土鬼の各部族の長。
作中では特にマニ族の長を指す。多分女性。(英語版では代名詞が“He”になってるが・・・)
表向きは神聖皇帝に従っているが、裏では土着の宗教を信奉している。ナウシカを青き衣の者と認めた最初の人物。
僧兵
土鬼僧会直属の兵士。土鬼諸侯国連合軍の士官的な立場にあると推測される。
皇帝の親衛隊は僧兵の精鋭部隊である。

 

< タ行 >

大王ヤンマ
小型の蟲。腐海の見張り役。
大海嘯
蟲たちの大移動、及び人間への襲撃。
腐海の木々の胞子をまとった状態で移動し力尽きて死んだ後、その死骸を苗床に木々が芽吹き、結果腐海が爆発的に拡大する現象。
「火の七日間」の後、三回あったらしい。
退行
問題が発生した時、幼児化してこれを回避しようとすること。「アタシ、わかんな〜い」的態度がこれにあたる。
自我を守る方略、「防衛機制」の一つ。
対症療法
病気の症状にのみ注目し、症状改善を目的とした治療を行うやり方。
効果は高く、即効性もあるが、副作用も大きくなりがちである。
精神医学の場合はその効果が表面的なものにとどまり、根本的な解決に至らない場合も多い。
黄昏の世界
火の七日間以後の人間界。腐海の拡大、石化の病、人間の愚行などにより滅びゆく世界を落日に例えている。
タナトス
死の本能。心の闇。作中では「虚無」。イドの破滅的・破壊的な側面。
エロスと対極をなし、エロスが生き続けようとするのに対し、タナトスは全てを放棄して無へ還ろうとする。
チクク
本名、ルワ・チクク・クルバルカ。土鬼人。推定年齢、6〜8歳。
極めて強い超常の力を持っている。
クルバルカは神聖皇帝以前の王族の名前。つまり彼は旧土鬼王家の末裔である。
この作品、出てくる人間ことごとく王族である。
チヤルカ
土鬼人。トルメキア戦役における土鬼軍の司令官。
低い身分出身の僧兵であったがミラルパに見出され、彼の片腕と呼ばれるまでになる。その為ミラルパに対し強い忠誠心を抱いている。
責任感の強い公正な人物でもあり、立場と良心の板挟みに苦悩する。
物語終盤ではナウシカの理解者となり、積極的に協力している。
超越者
本来の意味は一神教的な神。人の世の理の外に在る者。
ここでは意識・思考の主体が世界全体のレベルまで拡大した存在を指す。
超自我
スーパーエゴ。精神の三大要素の一つで倫理や理性を司る。
○○○するべきだ」、「●●●するべきではない」といった倫理的判断の基準となる。
超常の力
作中に出てくる超能力。念話・念動・幽体離脱などがある。
王蟲や巨神兵などにも同様の能力があることから、これは遺伝子工学の生み出した生物の新しい機能ではないかと推測される。
調停者
巨神兵の役割の一つ。戦闘をやめさせる為には自ら武力を行使する事も辞さないという、本末転倒な論理に基づく。
ツナギ
「愛」の本質。シェマの中で自己と特定の他者の概念を融合させる触媒。
これにより自己と他者の境界が曖昧になり、利他=利己となる。
庭園
火の七日間以前に存在していた動植物を保存している隔離された空間。旧時代の音楽や詩なども保存されている。来るべき清浄な世界への箱舟。
世界各地に複数点在しており、周辺の清浄化が完了した段階で自動的に(もしくは庭園の主によって)開放されると思われる。
庭園の主

旧文明の造ったヒドラ。庭園を管理・維持している。人間以上の知性と不老の肉体を持ち、幽体離脱や念話すら使えるヒドラの完成形。庭園に迷い込んできた人間をまやかしで惑わし、下僕にしてしまう。
性別は無く、身体の形をある程度変えられるが基本は男性形体。
墓所の番人と同一人物と思われる。

テト
ナウシカと常に行動を共にするキツネリス。人には決して懐かない事になっていたが簡単に懐いてしまったり、かと思えば威嚇したりとイマイチ判断基準の不明なマスコットキャラ。
清浄の地に行った時などは、幽体であったにもかかわらず虫を捕食するという荒技をやってのける。
オーマの毒の光に当てられ、発狂した後、衰弱死する。
テパ
風の谷の子供。ナウシカ不在の風の谷ではナウシカの代わりに風使いとして活躍。紛らわしい発言(B6/P-110の「母さん」)によって、「ナウシカの娘か!?」と読者を大いに混乱させた。
同一性
アイデンティティ。規定された自己像。「自分は○○○である」という信念。シェマの自分に関する部分。固着したペルソナとも言える。
同一性危機
同一性の維持に問題が生じた状態、さらには同一性の崩壊した状態。
具体的に言えば、自分が何の為に行動しているのか、何の為に存在しているのか、自分が何者なのかわからなくなった状態。老人ボケとは違う。
重大な認知的不協和などによって引き起こされる。
同調
人が周りに合わせて意見や行動を調整する心理傾向。社会的な動物には普遍的に見られる特徴である。
胴ヨロイ
ナウシカの出陣に際して、城ババたちが手間ヒマかけて作ったスケールメイル。
・・・が、わずか57ページ後に捨てられる。
土着の宗教
土王の時代に土鬼で信奉されていた宗教。王蟲を神聖視し、青き衣の者を使徒とするがそれ以外は不明。ナウシカ以前に現れた青き衣の者の思想が元になっていると思われる。
トラウマ
精神的外傷。 つらい体験が、その後の人生においても負の影響を与え続ける事。特に子供時代のトラウマは精神の発育過程において、深刻な問題となりえる。
恐怖症やヒステリー症候群などは、これが原因の場合も多い。
土鬼
正式な国名は「土鬼諸侯国連合」。大小様々な部族のモザイク国家である。
対立する各部族を、ミラルパが独自の宗教と恐怖によって抑え、統治していた。フセイン時代のイラクに近い。
トルメキア王国
風の谷の東に位置する強大な軍事国家。王都はトラスで、古代都市の廃墟に寄生している。
王家の紋章は絡みつく二匹の蛇。国教は定かではないが、土鬼とも辺境諸国とも異なる宗教である。
辺境諸国とは古い盟約を結び、一応の自治を認めている。
トルメキア戦役
トルメキア王国の土鬼侵攻による戦争。真の目的はシュワに隠された旧文明のテクノロジーであった。

 

< ナ行 >

ナウシカ
本作の主人公。風の谷の第十一王女。後に王位を継承。年齢16歳。
趣味は植物の採集と栽培。好きなものは生き物全般。
性格は優しく、基本的に明朗快活であるが、ディープにダークな一面も持っている。キレると怖い。
映画と原作(特に後半)では、ほとんど別人である。
ナウシカの母
11人の子を産むがナウシカを除いた10人を亡くす。ナウシカが子供の時に死亡。死因は不明。
ナムリス

土鬼初代神聖皇帝の息子であり、ミラルパの兄(皇兄)。推定年齢120歳前後。
生まれつき超常の力を持たなかった為、王位を弟にとられる。
墓所の技術で延命手術を繰り返し、最終的にはヒドラの身体になった。
機を見て弟ミラルパを暗殺すると、そのまま神聖皇帝の地位に就き、トルメキアへの進攻を図った。
享楽的・破滅的な性格で、ナウシカの対極に位置する存在といえる。
最後は首だけになりながらも壊れたセリフを発し続けたが、オーマの光に飛ばされて船から落下し、その後の消息は不明。とりあえず残った下半身をサパタ族。

認知的一貫性
自分のシェマの不変性。これが崩れると認知的不協和となる。
間違いを認めなかったり、新しい事実に目を向けられない者たちが囚われているものでもある。
自尊感情と密接なつながりがある。
認知的不協和
認知の不一致。シェマの揺らぎ。
既存のシェマでは解釈できないものを目にした時や、複数の相反する概念を持った時に発生する不安や混乱。
あまり大きいとシェマ全体の崩壊に繋がる。
粘菌
ミラルパが旧文明の技術で作らせたヒソクカリの変異体。大海嘯の原因である南の森。
造った人間の予想に反して爆発的な増殖力で土鬼の国土を飲み込む。
念動
一般的に言うところの、サイコキネシス。ミラルパと僧正が使うのが確認されている。
念話
同じく、テレパシー。作中では言語的な問題を解決する為、比較的普通に用いられている。

 

< ハ行 >

バカガラス
トルメキアの大型輸送機。腹が立つほど遅いらしい。
博士
土鬼僧会に提供された墓所のテクノロジーを扱う技術者。
墓所の主と土鬼皇帝の取り決めにしたがって教団が養成した土鬼人らしい。
汎神論
世界これ即ち神そのものである、とする理論。
あらゆる事物が固有の神性を持つというアニミズムや多神教とも微妙に異なり、ある意味、唯神論的である。
反動形成
欲求不満や不安などをごまかす為、本心とウラハラな言動をする事。
好きな人の前でわざと拗ねてみたりするのはこれにあたる。
自我を守る方略、「防衛機制」の一つ。
飛行ガメ
土鬼が使うタコツボのような形をした空飛ぶ乗り物。ガメラではない。
秘石
巨神兵起動のカギ。
序盤においては、ナウシカを物語の展開に関わらせる為のきっかけとして有意義であった。
終盤では復活した巨神兵に知性を与え、ナウシカを母と認めさせる役目を果したが、どうにも後付けした感じが否めない。
ヒドラ
旧文明のテクノロジーが生み出した人型の生物。ビジュアル的にはでっかいサボテンダー。
知性は無く、あくまで人間の下僕であり、特殊な音によって操られる。
急所は上部の眼であり、そこを破壊されない限り死なない。破壊された場合はなぜか溶ける。
火の七日間
巨大産業文明末期に勃発した戦争。
巨神兵が七日間で世界を焼き尽くした事からこう呼ばれる。
黄昏の時代の始まりである。
腐海
「旧文明」、及び「火の七日間」によって汚染された不毛の大地に新しく生まれた生態系。瘴気を放出する植物群と蟲群で構成される。
急速に拡大を続け、人類など在来種の生活圏を圧迫している。
大地の浄化の為に、旧文明の技術により人為的に生み出された事が物語終盤で判明する。
ちなみに英語版で腐海は「The sea of corruption」となっているが、語呂が悪いので本サイトの英語タイトルは「New Rotten-Sea Scrolls」にした。(英語版には誤訳も多い)
複製人
クローン人間。
延命を目的とした移植手術のために造られたと思われるが、ミラルパはそれを頑なに拒んだ。
フェミニズム
女性の地位を向上させ、男性と同等にすべきであると言う論理。
男女平等が基本理念のはずであるが、現実のフェミニストは単純に女性優遇を求めている者が多い。
当然、主張者のほとんどは女性であり、男性の場合はただの女好きである場合が少なくない。
ブリッグ
貨物船。ラステルが乗っていて墜ちたやつである。
古い盟約
トルメキア王国と辺境諸国との間に結ばれた盟約。
有事に際して各国はガンシップをもってトルメキア王の戦列に加わる、という内容。
これがあるからこそ辺境諸国は自治権を保っていられるらしい。
ペジテ市
風の谷の隣にある辺境の工房都市。
ヴ王の命を受けたクシャナによって殲滅される。
避難民を乗せたブリッグは墜落し、生存者は無し。王族中、唯一の生き残りがアスベルである。
ペルソナ
仮面の意。状況により変化する人格の様々な外面。
職場にいる時、家にいる時、友人といる時など、環境に応じてペルソナの付け替えが行われ、振る舞い方が変化する。
器用な人間はこの付け替えがスムーズに行われるが、不器用な人間の場合はペルソナの固着によって、状況に不適切な振る舞いをしてしまう事もある。
辺境諸国
トルメキアの属領。それぞれ自治権を保持している。元はエフタルと呼ばれる大国であった。
墓所の主
シュワの墓所の深部にある肉塊。世界再建計画の要であり推進者。
夏至と冬至に、その表面に一行ずつ旧文明のバイオテクノロジーを記した文字が現れる。
時の王に建造者らの映像を見せ、技術の提供と引き換えに協力を迫る。
活動を見たところ、あらかじめ設定されたプログラムに沿って行動する機械の様なものと思われる。
墓所の番人
「庭園の主」のもう一つの役割。ナウシカが墓所を否定した時点で、道化に憑依する形で現れた。
墓所の主が機械的に活動するのに対して、それを補佐・管理するソフトウェアの役割を担っていると推測される。
彼の論理は墓所の建造者の論理であり、この思想とナウシカの思想の対立によって、宮崎駿の哲学が描かれている。
ある意味、ラスボス。

 

< マ行 >

マニ族
土鬼の一部族。トルメキア軍の攻撃で故郷を失う。
僧正がミラルパに反逆した事で厳しい立場に追い込まれる。
ナウシカにもっとも近い土鬼の部族でもある。
ミト
風の谷の民。
ナウシカの従者の一人。眼帯がイカすおっちゃん。ナウシカをどこまでも信じている。
南の森
大海嘯の引き金。後に土鬼が生物兵器としての造った変異体の粘菌である事が判明。
ミラルパ
初代神聖皇帝の息子。ナムリスの弟で非常に強い超常の力を持つ。
墓所の延命技術によって物語開始時で既に115歳前後(推定)であったが、肉体の劣化は限界に達していたようだ。
当初は慈悲深い名君だったらしいが、やがてダークサイドに堕ちる。
ナウシカを帝国の敵とし、執拗に抹殺しよう試みるも全て失敗。
その後、シュワに帰還して療養していたところ、ナムリスによって謀殺された。
死後も怨念となって執拗にナウシカを付け狙うが、結局はナウシカの愛に救われ成仏する。
腐海に生息する無脊椎動物の総称。瘴気の中で生存できる唯一の生物群。羽虫サイズから王蟲サイズまで多種多様。
「火の七日間」 後、腐海の誕生と同時に発生した。全体が一つのヒエラルキーを構成するという、前代未聞の生態を持つ。
蟲使い
オオナメクジを使役する民族。十一の支族があったが、現在は八つに減っている。
300年前の大海嘯で国を失い、腐海の浅い部分に移り住んだ古エフタル人の末裔。
人間界と腐海の中間に位置していると言える。
メーヴェ
風使いの乗るエンジン付きの凧。描いてる宮崎自身、「あの乗り方には無理がある」と言っていた。
森の人
蟲使いの上位クラスとも言うべき人々。腐海の深部に住んでいる。蟲の腸をまとい、卵を食す。
300年前の大海嘯の時、青き衣の者に導かれて森に入ったとある。人間と言うより腐海の一部である。

 

< ヤ行 >

唯物論
世界の全ては物理的本質の上に成り立っているとする考え方。観念論と対極を成す。
誘因
人の行動を誘発する外発性の要因。
そこに山があるから登ったり、太陽が眩しいから人を殺したりするのは誘因による行動と言える。
幽体離脱
心だけ肉体から離れる能力。遠く離れた場所へ行ったり、離れた相手に攻撃するなど、かなり便利。
ユパ・ミラルダ

腐海の謎を解明する為に旅をしている剣士。出身不明。
ナウシカの師であり、その剣の腕は腐海一と言われる。
片手剣と短剣の二刀流を使う。
その強さもさることながら、人格的にも非常に優れており、物語終盤では自己同一性を見失ったクシャナに新たな道を指し示した。
最後は身を挺してクシャナをかばい、土鬼とトルメキアの争いに終止符を打った。

宮崎の理想的自己像であろう。

抑圧
不満や好ましくない感情・欲求などを意識から締め出す事。締め出されたものは無意識化する。
自我を守る方略、「防衛機制」の一つ。
預言者
神の言葉を人々に伝える者。
作中にて神とは世界であり、ナウシカはそれを最も深く理解する者であるから、ナウシカは預言者であるとも言える。
欲求階層説
心理学者マズローの提唱した理論。
人間の欲求は基底的な生理的欲求からより高次な社会的欲求、さらに自己実現の欲求へと階層をなしており、低次の欲求が満たされることに伴い、より高次の欲求が表出する
という内容。
つまり、欲求は決まった優先順位に従ってわきおこる、という意味。

 

< ラ行 >

ラステル
ペジテ市の王女。アスベルとは双子の兄妹。
トルメキア軍の攻撃をうけた自国からブリッグで避難する途中、蟲に襲われ墜落。
救助に来たナウシカに秘石を託し、息を引きとる。
リビドー
リビドーの意味として、フロイトは性衝動の源を指し、ユングは本能エネルギー全体を指した。だが、ここでは個体が自己の欠落(不完全性)を補完し、満ち足りた生存を獲得しようとする本能全般を指すものとする。欠落とは具体的には不満や不安、孤独などである。